「支払いを済ませてくる」
 と言ってアレクシスが先に席を立ったあと、片付けに来た店員がエリアーナに囁くように言った。

「奥様が羨ましいって、皆んなが言ってます。あの素敵な騎士様に、すっごく愛されてますよね!」

 そんな事を言われたものだから、胸の奥がぎゅーっと掴まれたように苦しくなる。この人たちは、いったい何を見てそう思うのか。

「いいえ、逆です……私は旦那様に、疎まれていますから」

 支払いを終えたアレクシスが、早く来いと言わんばかりにこちらを見ている。

「……え? そんな、だって」
「あの、とても美味しかったと、シェフにお礼を。ごめんなさい……もう行かなくちゃ」

 今にも泣き出しそうになりながら、エリアーナは店を出るアレクシスの後を追う。

「疎まれてるって? 騎士様は奥方さまが食べてらっしゃるのを、あんな愛おしそうに微笑んで見てたのに?」

 店員は首を傾げ、さも不思議そうに目を丸くしたのだった。