そして食事が運ばれてきてからも、仏頂面はずっと変わらないのだった。

「あの……」

 どうにもいたたまれなくなってエリアーナが口を開けば、静かに咀嚼を繰り返していたアレクシスが視線だけを上げる。
 
「お、美味しい、です」

 他に言葉が見付からなかった。
 この気まずさが苦しくて、何か気の利いた事のひとつでも言えればと自分を責めてしまう。
 
 アレクシスは、ふい、と目をそらせ、

「それは良かった」
 一言だけ発すれば、またひたすらに咀嚼する。

 ——旦那様と一緒に食事が出来るって……嬉しかったけれど、これでは息苦しくてまるで拷問。
 でも仕方がないわ……すぐに忘れそうになるけれど、今日は私が『罰』を受ける日なのだから。

 そう思えば納得がいく。
 そうだ——この時間ひとつも、アレクシスがエリアーナに『罰』を与えるためのものなのかも知れなかった。

 ——いっそのこと、羊の臓物を食べろと強要されれば良かった。
 これが『罰』の一環なら……中途半端な気遣いや優しさなんて要らなかったのに。