重く沈みそうになる気持ちをすくい上げ、夜着のままバルコニーに面した窓の前でう〜んと大きく伸びをした。
 眩しいほどの陽光を浴びれば、身体中の細胞という細胞が目を覚ます。

 ——夫に愛人がいても、お飾りでも。
 私は『みじめで孤独な妻』ではないはずよ……?

 胸の奥底から込み上げてくる寂しさと不安を押しやりながら、そう思おうと努力した。

 呼びかければいつでも《《守護妖精》》が妖精の里からやってくる。
 それに何よりエリアーナには、他の誰よりもエリアーナを理解し信頼できる心強い存在(ひと)——『クロード・ロジエ』がいるのだから。

「親愛なるクロード様。夫は今朝も不在ですが、私は平気です」

 胸の前で両手を組んでアメジストの目を閉じ、手紙を綴るようにつぶやいてみる。

 夫がそばにいなくても寂しくない、平気だなんて強がりだ。
 だけど……アレクシスに優しくされるなんて『叶わぬ夢』を見てしまった自分への、精一杯の抵抗なのだった。

(酷い扱いされてんだから、アレクシスとなんかさっさと離縁しなよ! 白い結婚ってやつでしょ? 《《手を付けられてない》》今ならまだ間に合うって!)

 どこからともなく耳に届いた《声》が、エリアーナの肩で軽やかに跳ねた。

「ルルっ、聞いていたの?!」