そう言ったアレクシスは——ロザンヌの返事も聞かずに、繋いだエリアーナの手を引いて『宴の間』を出たのだった。
 ロザンヌをはじめ周囲にいた者たちは驚いたろうが、もっと驚いているのはエリアーナだ。

「あのっ……旦那様、どこへ……?!」

 ——庇ってくれたと思ったけれど。
 『処罰を預かる』って、お義母様の代わりに、旦那様が私に罰を与えるってことよね……?

 理解が追いつかない胸の内側を、鼓動が激しく打ちつける。
 相変わらずエリアーナの手をすっぽりと包みこんでいるのは——熱をはらんだアレクシスの長い指先だ。

 銀糸の刺繍が施されたフロックコートの大きな背中は、振り返りもせずに廊下を歩いて行く。