友人の邸を出るまで昨夜の高揚感がくすぶるほど、久しぶりに愉しいと感じる時間を過ごせたと思う。
——ええ、ええ。
心穏やかでない日々は、あの無能な嫁のせい。
わたくしがあの娘を推したのは異能持ちだからよ、だたそれだけ。家門に益をもたらすと思っていた。でなければ息子と婚約などさせるものですか。
ああ……あの娘に異能がないなら、せめて身分の確かな令嬢とアレクシスを結婚させれば良かった。
苛立ちが募りはじめたので、ロザンヌは自らをいさめる。
——せっかくのすばらしい余韻が台無しになってしまうわ。今日ばかりは余計なことを考えるのはよしましょう。
車軸が石を踏み、馬車が大きく跳ねた。
その反動で微睡んでいた夫が目を覚まし、若い頃の面影を残す精悍な面差しをしばたたかせる。
「ふむ……。眠ってしまった」
「ええ。もうすぐ我が家に着きますわ」
「どうした?」
「何がですの」
「不機嫌な顔をして」
「あらそうかしら」
愛している。
その夫が笑顔を向けて来る。
ただそれだけで……苛立ちがなごみ、気に入らない嫁のことにも寛容になれてしまうのだから不思議なものだ。
——ええ、ええ。
心穏やかでない日々は、あの無能な嫁のせい。
わたくしがあの娘を推したのは異能持ちだからよ、だたそれだけ。家門に益をもたらすと思っていた。でなければ息子と婚約などさせるものですか。
ああ……あの娘に異能がないなら、せめて身分の確かな令嬢とアレクシスを結婚させれば良かった。
苛立ちが募りはじめたので、ロザンヌは自らをいさめる。
——せっかくのすばらしい余韻が台無しになってしまうわ。今日ばかりは余計なことを考えるのはよしましょう。
車軸が石を踏み、馬車が大きく跳ねた。
その反動で微睡んでいた夫が目を覚まし、若い頃の面影を残す精悍な面差しをしばたたかせる。
「ふむ……。眠ってしまった」
「ええ。もうすぐ我が家に着きますわ」
「どうした?」
「何がですの」
「不機嫌な顔をして」
「あらそうかしら」
愛している。
その夫が笑顔を向けて来る。
ただそれだけで……苛立ちがなごみ、気に入らない嫁のことにも寛容になれてしまうのだから不思議なものだ。

