《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?

 自室をとびだし、中庭を囲む回廊を足早に歩く。
 東の山際から顔を出したばかりの太陽は、細長い光の剣を木々の合間から忍ばせはじめていた。

 ——まだ六時にもなっていないのよ? 朝食を用意する厨房付きならまだしも、メイドたち全員がこんなに早朝から働いているなんて。夜だって、お義母様が起きてらっしゃるうちは帰れないみたいだし。

 いくら住み込みだとはいえ、ジークベルト家の屋敷で働く使用人たちが一般的な基準よりも重い労働を強いられていることを、エリアーナはずっと気に掛けていた。
 
「やだ、私ったらっ」
(え、なに、どうしたの?)
「お裁縫(さいほう)道具、鞄に入れるの忘れちゃった……」

 くるりときびすを返し、自室にあらかじめ準備してあったものを急いで取りに戻る。

(相変わらずエリーはおっちょこちょいだなぁ)

 幸いなことに、自由に使えるお金はじゅうぶんに与えられていた。侯爵家の奥方として恥ずかしくないよう、豪華に着飾るための資金として(使う機会は無かったけれど)。
 二週間かけて必要なものを取り寄せ、この日のために着々と準備を進めてきたのだ。

 ——宝石を買うほどではないけれど、けっこうな金額のお金を使ってしまった。失敗するわけにはいかない……!