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「はぁ……っ」

 ティーカップに注がれたばかりの琥珀色の液体から、白い湯気がゆらゆらと立ち昇るのをなんとなく見つめてしまう。
 金箔で縁取られた豪華な皿の上で、エリアーナは檸檬色の玉子をフォークの懐にすくい上げたまま手を止めた。

 重厚なカーテンの隙間から細長い日差しが差し込んでいる。
 晴天の早朝だとは思えないほど薄暗いのは、義母の趣味である、年代ものの古く分厚いカーテンがせっかくの朝日を遮っているせいだ。

(あーあ、また溜め息ついてる。だから言ってるでしょ? とっとと離縁したほうがいいって!)

 隣の席に座らせているうさぎが呆れ声で訴える。
 はたから見れば、もうすぐ十八歳にもなるいい大人が縫いぐるみを連れ歩く幼児趣味だと思われかねないだろう。だがエリアーナはあまり気にしていない、このうさぎはエリアーナの《《家族》》なのだから。

「ルルはそう言うけれど、クロードは思いとどまれって」