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「——アレクシス!」
王宮の回廊は閑散としていた。
人気のないがらんどうの空間に、若い男の澄んだ声と小走りの靴音が響く。
俯きがちだった顔を上げれば、天井まで伸びる格子窓から差し込む陽光の眩しさにアレクシスは思わず目を眇めた。
「なんだ、お前か、カイン」
「何だはないだろう。人がせっかく心配して声をかけてやったのに。おいおいどうした? 朝からずっと浮かない顔してるじゃないか。書記官のかわい子ちゃんたちが心配してたぞ?」
カインと呼ばれた青年はアレクシスと同じ宮廷管轄の特異魔法省に出仕する補佐官の一人で、アレクシスとは気心の知れた古くからの友人でもある。
「誰にでも惜しげなくキラースマイルを投げ散らす『白薔薇の騎士様』が、女の子に挨拶されても口角をほんのちょっと上げるだけだなんて。そりゃあ心配にもなりますよ、君の心友としてはね」
カインの燃えるような赤髪から覗く金色の瞳が弄ぶように微笑んだ。
「——アレクシス!」
王宮の回廊は閑散としていた。
人気のないがらんどうの空間に、若い男の澄んだ声と小走りの靴音が響く。
俯きがちだった顔を上げれば、天井まで伸びる格子窓から差し込む陽光の眩しさにアレクシスは思わず目を眇めた。
「なんだ、お前か、カイン」
「何だはないだろう。人がせっかく心配して声をかけてやったのに。おいおいどうした? 朝からずっと浮かない顔してるじゃないか。書記官のかわい子ちゃんたちが心配してたぞ?」
カインと呼ばれた青年はアレクシスと同じ宮廷管轄の特異魔法省に出仕する補佐官の一人で、アレクシスとは気心の知れた古くからの友人でもある。
「誰にでも惜しげなくキラースマイルを投げ散らす『白薔薇の騎士様』が、女の子に挨拶されても口角をほんのちょっと上げるだけだなんて。そりゃあ心配にもなりますよ、君の心友としてはね」
カインの燃えるような赤髪から覗く金色の瞳が弄ぶように微笑んだ。