—— 十年前の《《あの失態》》を忘れたか。『王の眼』をお守りする大役を拝命しながら、いざと言う時に大義を果たせず先代の『王の眼』を死なせた罪は重い。本来ならばおまえを精霊の魂ごと滅するところだが、エリアーナ・アビスの守護を任されたのはおまえが守れなかった亡き先代の『王の眼』のご遺志によるものだ。私と彼女の信頼を裏切ることは許されない、二度と同じ失態を繰り返すな。おまえの働きの如何《いかん》が一国の進退にも関わると言うことをその翼に刻め。
ルルはひどく臆病で、鍛錬の相手が翼の小さな後輩であっても対峙するのが怖くて足がすくんでしまう——無能な落ちこぼれ妖精。
それに……どんなに息んでも踏ん張っても、《《妖精の翼》》をうまく広げられないのだ。
翼が閉じたままでは飛ぶことだってできない。まさに致命的だ。
そんなルルは仲間たちの笑い草であった。それなのに———。
——ルル。あなたがいてくれるから、怖くない。
ルルはきっと、私を守ってくれる。
うさぎの頭を優しく撫でながら、亡き先代の『王の眼』、エリアーナの母クリスタはそう言った。
——ごめん……。ごめんよ、クリスタ。
あんなにボクを信頼してくれてたのに……なのにボクは……君を守れなかった……!
うさぎは、目の前で大好きなクリスタが肉の塊となって散る姿を、成す術もなく茫然と見つめていた。恐怖に打ち震えた臆病な守護妖精ルルの身体は、あの時、ほんの少しも動かなかった。

