こく、こく。大きく頷くメイドも驚いている様子だ。
 エリアーナが知る限りで言えば、アレクシスは仕事から戻るとすぐ離れ屋敷に向かう。食事も離れ屋敷で摂り、本邸にはほとんど顔を出さないのである。

 ——よほどの用事でもあったのかしら。

 エリアーナが小首を傾げていると、メイドが小声で告げた。

「今夜は若奥様の寝室で眠ると仰って、『(ねや)の支度』をしておけと……」

「……………ぇ?」

 メイドが何を言ったのか、しばらく理解ができなかった。