先ずは『王の眼』発現の事実の有無を確かめねばなるまい。
 問題はどうやってそれを知るかだ——。


「随分と早起きね? また怖い顔をして、いったいどうしたの?」

 起き抜けのアルマから香油が薫った。
 エリアーナなら絶対に使わぬと思える、麝香の強い香りだ。

 夜着を着崩したアルマは書卓を睨むアレクシスの背中に腕を回し、寄りかかるようにして背後から抱きしめた。

「なんなら、この身体で慰めてあげてもよくってよ? いくら私が治癒魔法を使えると言っても、治せるのは身体の傷だけですもの」

 猫なで声で耳元に囁くアルマの腕を、アレクシスはゆっくりと引きはがす。

「よしてくれ。君とは《《そういう関係》》じゃないだろう」
「あら、そういう関係って、どういう関係? 私はれっきとしたアレクの《《愛人》》のつもりよ?」

「それは……ッ」
「エリアーナとかいうあの()がお屋敷に来ると決まった日、『そういうことにして欲しい』って言ったのは、アレク、あなたでしょ?」