真っ白な魔法鳩が丸い目でまばたきをしながら心配そうに眺めている。
 足元に寝そべっていたドーベルマンのマルクスも、主人の異変に気付いてクゥン? と眠そうな顔を上げた。

「……やはり、そうか」

 手紙にははっきりと「不貞を犯した」と書かれていた。

「エリーはあの男を……」

 溢れんばかりの愛情をろくに示せぬまま、エリアーナを奪われた失望もさることながら。
 何よりも案じるべくはエリアーナ自身も気付かぬところで『王の眼』の異能が発現している可能性についてだ。
 
 ——もしもそうなら、異能の発現をどこまで隠し通せる?
 エリーを『王の眼』として王宮になど上げるものか……!

 アビス一族の娘を娶ったアレクシスが妻の異能の発現を隠していたと発覚すれば、当然、重大事項の隠蔽と国王を欺瞞した罪を問われるだろう。

「だとしても、俺はどうなったっていい……エリーを守ると決めたのだ」