「信じてください、私……レオンとは本当に……!」

 失望を背負った大きな背中がだんだん小さくなっていく。
 だけど引き止める言葉が見当たらない。アレクシスに今、どんな言い訳ができるだろう。

 嗚咽を漏らしそうになって口元を両手で押さえた。力を失った両脚は土の上に膝をつく。

 知らぬ間に溢れ出した涙が、エリアーナの硬くなった頬に幾筋も伝い落ちた。


 *


 ——今日まで夫たりうる行為の全てを放棄してきた。
 アルマを離れ屋敷に囲い、エリーの(ねや)を夫として訪れた事もない。そんな俺にエリーを責める資格などない。

 いたたまれなくなって背を向けたものの、強く後ろ髪を引かれた。
 エリアーナは何を思い、今頃どんな顔をしているだろう。

 ——突然くちづけようとした俺に失望しただろうか。