「……色々と問題のある生徒さんみたいだし、心配なさったのではないかしら」

「問題って?! だったらエリーもまだまだ新入生よ、あの性悪なジゼルたちに揶揄われてるじゃないの。あれはれっきとしたいじめよ? こっちが心配してもらいたいくらいだわ」

 生徒会室に呼ばれたエリアーナとアンは、生徒会長直々に編入して間もない下級生の面倒を見てやって欲しいと頼まれたのだった。

 エリアーナも編入して日が浅いため新入生どうし、気持ちが通じるのではと白羽の矢が立ったようだが、こちらも色々な事情を抱えている。
 正直、他人の面倒——それも編入早々、かなりのトラブルメーカーらしい——を見る余裕なんて今は持ち合わせていない。

「書庫室って言っても広いんだけど……《《その子》》、どこにいるんだろう?」

 一階も二階にも、見渡す限り天井にまでそびえる本棚が幾重にも連なっている。
 生徒会長から当該の女生徒が待っていると聞いているけれど——放課後の図書室は閑散として、本棚に囲まれた自習机に座る男子生徒がぽつぽつ見えるだけだ。

「私、二階を探してくるね。エリーは一階をお願い! 長い黒髪にルビーレッドの瞳の女の子よっ」

「アン、ちょっと待って……!」