「王宮の騎士様、素敵だったわね……!」

 砕けかけたエリアーナの気持ちなどつゆ知らず、詩人のアンはふにゃりと頬を緩める。
 
「神秘的な髪色、宝石ともみまごう青灰色の瞳……雪原に佇む銀色の狼みたいだった。まれに見るイケメンよあれは! 生徒会のメンバー全員イケメンだし、生徒会長の周りってなんでイケメンばかりが集まるの? イケメン収集能力?! はぁっ、一度でいいから、あんな綺麗な男性(ひと)にとろとろに愛されてみたいなぁぁっ」

 恋に恋する夢見がちなアンの隣で、エリアーナは両足に鉄球を繋いだように重い一歩を進めていた。
 頭の中が黒い霧にすっぽりと覆われ、アンに返事をする気力さえも沸かない。

「それに! 私たちに《編入生の世話をして欲しい》だなんて。生徒会長もたかがその編入生ひとりに目をかけすぎだと思わない?」