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 生徒会室を出たエリアーナとアンは書庫室に向かって歩いていた。
 すっかり傾いた太陽は世界をオレンジ色に染めている。広々とした学園の書庫室もまた、橙色の水の中にすっぽりと浸かるようだ。

 ——魔術学園に通っていること、嘘をついてそれを隠していたこと。旦那様はきっと物凄く怒っているでしょうね。

 昨日はアレクシスが初めて笑顔を向けてくれた。
 着飾ったエリアーナを初めて「綺麗だった」とほめてくれた。
 そのことが嬉しくて、ジークベルト侯爵家に嫁入りしてから初めて、とても幸せな気持ちで目覚めることができたのに。

 生徒会室でアレクシスが見せた表情は昨日の優しい笑顔とはかけ離れたものであった。
 それを見たエリアーナの硝子の心は、アレクシスの失望の眼差しに射抜かれた。