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 教場の窓際の席でエリアーナは物憂げに頬杖をつき、はぁ……と大きな溜息を吐いた。
 蕩けるようなアレクシスの笑顔を見せられ、ふれるだけとはいえ手の甲にくちづけられた昨日の夜から、困ったことに頬に昇る火照りがおさまらないのだった。

 ロッカジロヴィネ魔術学園の各教場は席を立った生徒たちが騒めき始め、昼休みを知らせる鐘の音がまだ鳴り止まない。
 由緒ある古城をそのまま学舎として使用しているらしいが、歴史の重みを感じさせる佇まいは壮麗で、煉瓦造りの時計塔が堂々とそびえる。今日のような天気の良い日には広々とした中庭で昼食をとる生徒も多い。
 白い雲が悠然と流れる様子をぼうっと眺めていると、

「エリーっ、ご飯行こーっ!」

 聴き慣れた声がして、編み込んだ赤毛を肩に垂らした女生徒が近付いた。エリアーナの数少ない友人のひとり、アン・レオノールだ。