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「くるみー、もちろん今日は浴衣きるよね?」

七夕祭り当日。

私は涼しさ重視のショートパンツと半袖Tシャツという、ラフな格好で行くつもりだ。

「え?着ないよ?」

花梨は、浴衣をきるつもりらしい。

見方によってはダブルデートだし、右京くんとラブラブの花梨は浴衣でも良いのかも知れない。

「ダーメ!胡桃も浴衣着て!」

「振られに行くのにオシャレしたって意味ないよ…」

私がオシャレしたって惨めなだけだ。

「いーから。はい、これね」

花梨に渡されたのは白地に水色の花の散った可愛らしい浴衣だった。

「ちなみに、私のと色違いだから」

花梨の浴衣は白地にピンクの花が散っている浴衣らしい。

「だから、着ないって!」

「大丈夫!似合うから。じゃあ私も着替えてくる」

いつも私は、こうして可能に押し切られてしまう。

別に花梨を無視して予定通りの服を着ればいい。

それだけの話だけど、私は花梨が持ってきた浴衣を着てみたいと思ってしまった。

私がやったわけじゃない、花梨に着させられただけだ、と自分に言い聞かせながら浴衣に袖を通す。

趣味の良い、可愛らしい浴衣は、私にしっかり馴染んだ。