「その時の俺はさ、少しでも褒めて欲しくて、“愛してる”って言われたくてめちゃくちゃ無理してた。学級委員とか、行事の実行委員とか、片っ端からやった。…まぁ、無意味だったんだけどね」

右京くんは遠くを見るような目をしていた。

「嫌われるのが嫌で周りに好かれる人物像をずっと探してた。父さんは世界中を飛び回ってるから、ほとんど家に居なかったしね」

右京くんが悩みに悩んでたどり着いたのが、今の王子様のような右京くんなのだと考えると涙が溢れそうになる。

「小5の時に母さんが病気で死んでさ。楽になったはずなのに、悲しくて。自分でも自分がよくわかんなかった。父さんも俺に高い成績を求めたけど、一度や二度満点を逃したらくらいではなにも言われなかった。と、いうか無関心だったのかな」

右京くんの瞳に苦悩の色が浮かぶ。

「で、今に至るって感じかな。まぁ、その間も色々あったけどね」

右京くんが今まで以上口の端を持ち上げた。

無理やり明るく締めくくろうとしているのがわかる。

「私に出会ってくれてありがとう。大好きだよ」

右京くんが一番欲している言葉はこれなんじゃないかと思った。

気がついたら体が勝手に動きだした。

迷子のように瞳を彷徨わせる右京くんを思いっきり抱きしめる。

「…かりんっ、」

右京くんが苦しそうに私を呼んだ。

ぎゅうっと、苦しい程に抱きしめかえされる。

私が抱きしめているつもりなのに、いつの間にか、私が抱きしめているられているような形になっている。

「俺のせいで、花梨にたくさん迷惑かけると思う。花梨に愛される幸せを知ってしまったから、もう俺は花梨が居ない世界では生きていけない」

「うん。それでいいよ。私は何があっても右京くんから離れないから。むしろ、どうやったら嫌いになれるのかわからないくらい、右京くんが好き」