こんな気持ちのときに限って














患者はどんどん運ばれてきて














運ばれてきた患者は














症状が重く助からない人がほとんどだった














そして、また自分を追い込んだ














亡くなった患者のカルテを集めて














異常なほどに読み返して














治療方針を見直した。














あの時この薬を使っていれば














あの時この処置をしていれば














あの時すぐ手術をしていれば














あの時あの時あの時あの時あの時














そればっかり考えていた。














樹「お前、働きすぎ」














出勤してきた樹にそう言われた














樹「ちゃんと寝れてないだろ」














「ちゃんと、寝てる」














樹にまで嘘をついた














それに3時間くらいは寝れてるし














今は寝てる時間がもったいなくて














樹「嘘つくな」














「俺、まだやることあって」














樹「今日はもう帰れ」














「いや、まだ無理」














樹「お前な...」














今にも怒りそうな様子の樹














いや、もう怒ってるか。














そんなことを冷静に考え出す俺














樹「...ちょっと来い」














「仕事終わらせないと、」














樹「ほんとに怒るよ?」














もう怒ってるじゃん...














樹「ほら、立って」














そう言って俺を立たせようとする














「分かったって、」














そう言って立とうとする














だけど、目の前がぐらんと揺れた














そして、意識を失った。














ピッピッピッ














そんな聞き慣れた音で目を覚ます














「んっ、」