Hush night



じわじわと頬が赤くなることを自覚していると、麗日はその隙にわたしから距離を取った。

捨てられたかのような錯覚に陥り、突然怖くなる。



温もりが離れてしまい、悲しくて仕方がなくて、小さく口を開く。


「れい、ひ、」



ゆっくりと手を伸ばすと、麗日は不安を押し出すようにわたしを抱きすくめた。

そうしてわたしの背中をぽんぽんと叩き、甘やかしてくれる。



「俺はうるから絶対離れないけど。あんま可愛いとしんどいから、わかって。な?」


「…………、うん」




「死ぬほど大事だから、そう簡単に手出せねえの」




わたしなんて、出会って数日なのに。

この人に大事だと言ってもらえるほどの、そんな価値などないのに。


それまでの過去の麗日を、わたしは全く知らないけれど、どうしてか、その言葉は信じていいような気がした。