Hush night


麗日の部屋から出ると、壁にもたれながらスマホをいじっていた弾さんが顔を上げた。


「行こうか」



首を縦に振り、エレベーターに乗る。

改めて見ると、弾さんは驚くほどスタイルが良い。


長身だし、何より華奢だ。

肩幅のある麗日より少し細身で、切長の瞳が冷たい印象を与えている。


それなのに軽い口調が柔らかさを持っており、違和感の覚えるちぐはぐさがあるのだ。



「以前より、おどおどしなくなったね?」



貼り付けたような笑顔を向けてくる弾さんの言葉に、思わず俯く。

こういうところが……特に苦手だ。


何を考えているかわからない。

……それはお互い様かもしれないけれど。



「そう、……ですか」



片眉を上げた弾さんは、肩をすくめて笑った。

それから沈黙が続き、無言で車に乗り込み、発車した。