「……、」
口が開かない。
なにも言えない。
否定することができないような、そんな圧を感じてしまったから。
「なんにも言わねえなら、本気でもらうぜ?」
わたしが何者かもわからないのに?
あの【レイ】がこんな人?
……信じられない。
どこまでも黙りを貫くわたしに、呆れる様子のない彼は、思いついたようにポケットからスマホを取り出してどこかに電話をかけた。
「……あー、俺。
うん、だからすぐ戻るって……、え、いま?」
チラッとこっちを見た男。
すると、気味悪く、満足そうに口角をあげた。
「女拾ったから、車よろしくー」
そう言い、ブチっと切った男。
……電話の相手が叫んでいたような気がしたのは気のせい?



