Hush night


「いいか。『獅童(しどう)組』の名を汚した奴はどこのどいつだろうと排除する」



────獅童組。


暗澹と闇に染まった世界で、最も実権を握り、逆らう者はいないとされる組織。

そのトップは、目の前の彼。麗日こと【レイ】だ。


数年前、異例の若さでトップに着任し、この世界に名を轟かせた【レイ】。


美しく恐ろしく、若さなどに引けを取らないカリスマ性がある。

彼が為すのは、かつてマックス・ウェーバーが言った支配の種類でいうところのカリスマ的支配だろう。


統率力は無論、なによりも彼について行きたいと心から思わせる華がある。


組織である獅童という名は、数代遡った創始者の名前らしい。


そんな獅童組をたったひとりで牽引する麗日は、誰よりも責任を被り、関わるだけで危ないとされる人。



冷徹で無慈悲。

その言葉のとおり、いまの麗日の瞳には光が宿っていなかった。