Hush night



それからしばらくすると、静かに車が止まった。

「着いたぞ」


弾さんの言葉に、麗日がわたしに回していた腕を離す。

少し寂しいと思いつつ、麗日に続いて車を降りた。


「……、」


見上げると、目の前には何の変哲もない高層ビルが立っていた。


何階建てだろうか。

目視でわからないほどの高い建物だ。


ここが彼らのアジト……。

綺麗な外見であったり、普通のビジネス街にそびえていることの意外性が高くて驚く。


そんなところへ躊躇いもなく、ズンズンと進んで行く麗日の後ろを歩くのも心もとない。

突然の電話の対応で、弾さんはそばにいない。


わたしが麗日の隣を歩くのは、烏滸がましいのと気が引ける思いが募る。

彼の一歩後ろを萎縮しながら静かに歩いていると、突然くるりとこちらを見た彼が言った。



「ちゃんと着いてきてるか心配だから隣来て」



困ったように眉を下げられると、彼のその表情にめっぽう弱いわたしは忠実に動く。


躊躇いながらも麗日の隣を歩くと、彼が嬉しそうに目を細めたから、こちらも少し嬉しくなった。


エレベーターに乗って最上階まで向かっていると、麗日はわたしの顔を逸らすことなくじーっと見つめてくる。

あまりにも視線を感じるものだから小さく首を傾げると、彼は平然と口を開く。


「うるが俺の服着てるの、最高に良いかも」

「……え、」



……なにを言うの。

フリーズするわたしに、麗日は喉を鳴らして笑う。


「んー、まあ男心ってやつ」

「……う、ん?」


「うるはわかんなくていーよ」



納得いかないまま頷くと、麗日はまた喉を鳴らした。

もしかしたらわたしの反応を見て楽しんでいるのかもしれない。


それくらいのことをしそうな人だし、別に嫌な気はしないのだけれど、わたしは彼には一生勝てないだろうなと思う。