麗日の部屋を出るとき、「これも俺のやつ」と彼の黒いキャップを被らされた。
目元まで隠れるおかげで他人の視線に気を配らなくて良くなってほっとする。
彼のこの行動の目的が、部屋にわたしが出入りしていることを知られないようにするためだとしても、わたしはその配慮に違う意味で助かったのだ。
エレベーターに乗って下に降りる。
そのまま外に出ると、昨日と同じ黒塗りの大型車が停まっていた。
「急いで、ふたりとも」
弾さんが車の扉を開けてくれ、小さく礼を言いながら中へ入る。
麗日はわたしの隣に躊躇なく座ったあと、不満げに弾さんを見た。
「俺が遅れるって言ったら仕方ねえんだから、そんなに急かさなくて良くね?」
「何言ってんの。麗日のその粗暴さを見張るために俺がいるんだよ」
「そーでした。お前は俺のお目付役だったな」
そう嘆き、麗日はわたしの肩に腕を回した。
そのまま呑気にあくびをしている彼を見ると、なんとも気の抜けた人だろうと思ってしまう。
普段は、噂通りの冷酷無慈悲ではないのだろうか。
少なくとも、わたしがそばにいるときは、そのような態度は見せない。
「ていうか麗日、うるちゃんが着てる服、お前の服じゃん」
キャップも、と指摘され、萎縮する。
麗日が言ったとおり、この服は彼のものだと周知の事実らしい。
麗日の片腕の中で縮こまっていると、彼はなんでもなさそうに頷いた。
「おかげで誰も手出せねえだろ」
わたしの髪を丁寧に触れる麗日。
その優しさに、彼に愛されていると勘違いしそうになる。



