彼の少し冷たい手が、わたしの服の中に侵入し────かけたそのとき。
ピンポーーンと軽快な音が鳴って、ぴたりとその動きが止まった。
わたしに覆いかぶさっていた麗日は、じっとわたしを見つめたあと、平然とした顔で呟いた。
「助かったわ」
そのままわたしの背中に手を回して、ひょいっと起き上がらせてくれる。
そうして衣服を整えてくれ、乱れた髪を直してくれる。
……面倒見がいいひとだ。
まだ夢の中のようなふわふわした感覚にいるわたしをお構いなく、彼は気だるげに立ち上がってインターホンの所まで行く。
「はい、俺」
麗日がインターホンに出ると、モニターに映っている弾さんが見えた。
昨日の出来事がフラッシュバックして、急に現実に戻った感覚に陥る。
『麗日さ、真っ昼間から何やってんのか知らないけど会議間に合わねえよ』
「あーまじ。適当に用意してすぐ行くわ」
『車、下止めてるからさっさと来いよ』
間伸びした返事をしたあとに、麗日はモニターを切る。
そうしてわたしをチラッと見たあと、何かを考え込むように顎に手を当てた。
……?
どうしたんだろう、と思っていると、麗日はすぐに顔を上げて言った。
「服、そのままじゃ外出にくいだろ」
……服?
不思議に思って自分の衣服を見ると、かなり汚れが付いていて、みすぼらしい。
麗日に着いてきてほしいと言われているのだから、こんな格好で彼の隣を歩くのは気が引ける。
控えめにコクリと頷くと、麗日は自分のクローゼットからお洒落なスウェットを持ってくると、それをわたしにすぽっと被せた。



