Hush night


「……っは、ぁ」


自分じゃないような声が出て、思わず拳を握りしめて我慢する。

爪が食い込んで痛みを感じたおかげで神経がそちらに集中し、声が出なくなる。


すると、それに気づいた麗日がわたしを冷たい床に押し倒した。



「だめ、それやめろ」


「や、だ……っ」



「やだじゃねえ。血出るぞ」


器用にもわたしの片手を掴んだと思えば、自分の首の後ろに回させる。

反転した世界でぐっと顔が近づき、言われたとおり目を閉じる。


首筋に麗日の舌が這って、びくっとする。



「やべえ、昼なのに襲ってるわ」



困ったように、そう笑う麗日。

そのくせ、止めようとしない悪い人。


「……っ、ぁ」


これ以上、わたしを暴かないで。

これ以上わたしを、あなたに溺れさせないで。


だめだってわかってるのに、わたしは従順にも彼の手中に収まってしまう。


麗日に触れられるときだけ、わたしは優しくしてもらえる人間なのだと感じることができるから。

価値のある人間のように思えるから。



だからわたしは、この男の毒を、自ら欲しがりになっている。



「あー……傷がちゃんと治るまで、手出さないって決めてたのに」


キスの合間にそう呟く麗日。

どうしてキスしているのにそんなに話せるの?と思いながら、ぼーっと聞く。


「少しくらい許せよ」


苦くて甘い煙草の香りが、わたしにも移っていく。

長い長いキスに溺れて、息が苦しいほどになる。