Hush night


それなのに、どうしてだろう。

痛いか、と聞かれて、また涙が出そうになったのは。


辛そうにわたしを見る麗日が、嘘偽りない極上に優しい男に見えたのは。



ぱっと俯く。

口を開くのに数秒かかりながらも、やっとのことで声を振り絞る。



「いた、い……」



傷の痛みなんてどうでもいいはずだった。

だけど、わたしのことで悲しそうに顔を歪める麗日には、本音を漏らしても良い気がした。


全部受け入れてくれるような包容力が、彼にはあると思ったから。


「いたいよ……、っれいひ、」



ずっと殺していた心が、温まっていく。

解放した気持ちが、泣きたいくらいに溢れ出ていく。



「……うん、痛いな、ごめんな」



途端にわたしを抱きすくめ、安心させるように頭を撫でてくれる。



麗日が謝る必要なんてどこにもないのに、彼はごめんを繰り返している。

この傷の痛みは、彼には一切関係がないのに。