彼はよくわたしの頭に手を置く。
安心させるように、温もりを渡してくれる。
だから癖なのかな……と不思議に思って口にするも、麗日はキョトンとして首を傾げた。
「撫でるの? え、普通だけど」
あっさりそう言われてしまい、少しだけ……拍子抜け。
無意識だったらしく、麗日は少し考えるように天を仰いで言う。
「まあ、でも……うるの頭撫でるのは好きかも。てか、うるしか触んないけどさ」
「……そ、っか」
「そ。俺けっこー潔癖なの」
狡い。
わたしはそんな甘い言葉、掛けられたことないのに。
優しい瞳も、ぜんぶ。
麗日が……、ほんとに初めてだ。
わたしの記憶を塗り替えるように、壊れ物を扱うように、そんなふうに接してくれるのは。
だからこそ───。
わたしの “嘘” は浮き彫りになりそうで、怖い。



