Hush night



奇しくも、魅了された。

この男の手を、取ってもいいんじゃないかと。

彼はボロボロなわたしを、温かく優しく包みこんでくれるのではないかと。



甘い考えが、わたしの固い意志を惑わす。



「雑念なんか捨てろって言ったじゃん?」


難しい顔をしているわたしに気づいた麗日が、どこか寂しそうにそう呟き、目を見据えた。



「……俺が優しいのはお前だけ」



信じ込ませるように。

なにか企んでいるように見えないのは。


この男が【レイ】だからだろうか。




「疲れたなら、寝な?」



いつのまにか、ウトウトしていた。

居心地がいいと、安心してしまう。



……食べろと言われたご飯は 、起きてからでいいか。

こんなにも安らかな夜は初めてで。


「おいで」


麗日に抱きしめられ、そのままソファに沈む。

柔らかな心地よい眠りが襲ってきて、目を瞑る。


眠い脳はフリーズしていき、ゆっくりと溶けていく頭の中で────この男から離れたくない、と。


不覚にもそう思った。