「……わたし、これまでの人生で、生きていて良かったと思うことが……本当になかったの」
父だけではなく、兄や麗日、ほかの組員の人たちにも語るように話す。
堅かった空気が和らいだ気がして、少しだけ話しやすくなった。
「大好きなお兄ちゃんは……変わっちゃって、お母さんは家から出て行った。お父さんは……ぜんぜん帰ってこなくて、」
家族全員から逃げられたような感覚だった。
誰を頼れば良いのか分からなかった。
「痛くて苦しい世界でずっと生きていくんだと思ってた。だけど……真っ暗な闇の中で、麗日がわたしを見ていたの」
まともに人と目を合わせたのは、久しぶりだった。
揺るがない瞳を惜しみなくわたしに向けてくれたのは、きっと麗日が初めてだったのだ。
「麗日が手を差し伸べてくれて一緒に過ごしていくなかで……わたしはここにいて良いんだって、思ったの、」
苦しくもがいていた世界が、一瞬で柔らかく明るいものになった。
気づけば、目の前に美しく優しい世界が広がっていた。
「だから……これからは、麗日と、一緒にいたい。それがいちばんの……わたしの幸せ」



