わたしも泣いていた。
ずっと離れられない悪魔だと思っていた兄も、わたしと同じ顔をして涙を落としていた。
壊れたように首を縦に振って、兄は頷く。
……やっと、わたしは……自由なんだ。
解き放たれた安堵と少しの寂しさを抱え、目を擦った。
「……雨瑠、すまなかった」
今度は父が、わたしに向かって頭を下げていた。
ほとんど関わりがなかった家族だけれど、少し兄に顔が似ていることに気付く。
黙って父を見つめれば、眉を下げて彼は言う。
「僕は父親なのに、何も気づいてやれなかった。仕事を言い訳に雨瑠や李水との時間を作らなかった……僕のせいだな。本当にすまない」
「……お父さん、」
「大切な人たちを守れなかったのは、僕だ。子どもたちも、雨瑠の母も、麗日の母も……誰ひとり守れなかった」
「……、うん」
「だから、これから雨瑠には、笑って過ごせる場所で人生を歩んでほしい。それだけが僕の願いなんだ」
「……うん、」
「情けない父親で申し訳ない」
切なげに目を細めた父は、いつもより小さく見えた。
きっと父は、組員を守るのに精一杯だったのだろう。
誰よりも気を張り、危険と隣り合わせの生活を送っていたのだから。



