Hush night




なにも言えなかった。

許すことなど出来ないけれど、弱った兄を見たら苦しかった。


ぐるぐると胃の中で圧迫感が襲って来る。


真新しい傷が疼いて、存在を知らせる。

許さない、とでも身体が言うように。



「……ごめんな、兄ちゃんのせいで傷付けたよな、」

「…………っ、本当、だよ」



か細い声が喉の奥から漏れた。

ハッとしたように兄は視線を上げ、わたしを真正面から見つめてくる。


しっかり目を合わせたのはいつぶりだろうか。

いつもは対等な視線じゃなく、兄がわたしを見下ろす形だった。


いまでさえ、殴られたときのことを鮮明に思い出す。

どれほど謝られても、それは変わらない。