喚く兄を諌めるように、父は少し荒げた声でそう言った。
その迫力に怖気付いた兄は、何も言えずに項垂れた。
「……自分勝手な人間は、トップになれない」
父は、冷静にそう続ける。
そして、地面に倒れ込んでいる兄の目の前にしゃがみ込んで口を開いた。
「李水には、平穏な世界で生きてほしかったんだよ」
「……平、穏」
「ああ。大切な息子だからこそ、危険が及ぶこの仕事を継がすわけにはいかなかった」
「……っ、」
隠れた真実に、兄は息を呑んだ。
……見放していたわけじゃなかった。
大切に思うからこその行動だったのだ。
それを知って、本当にこの人は自分たちの父親なのだという実感が湧く。
「それに、李水には少し感情的なところがあると分かっていた。だから、感情に乏しかった麗日をトップにして、お互いを補えるように支え合って、獅童組を作っていけたら良いと思っていたんだよ」
「……っ、そんなの、」
「そう考えた僕が浅はかだった。李水にきちんと説明もしないで、麗日を組頭にしたんだ。僕にも責任がある」



