「どうして……」
言葉を途切れさせた兄は、それきり口を開こうとしなかった。
父の口から麗日の名前が出てきたおかげで、話す言葉が思いつかなかったのかもしれない。
それとも、この状況を父に知られていたらという恐怖があるのかもしれない。
長い沈黙のあと、父は突然ぐっと表情を険しくさせ、兄のほうへ一歩近づいた。
その瞬間、ビリッと空気が割れた。
父が怒っていることが、ひしひしと伝わる雰囲気に、皆が固唾を呑んで見守る。
「李水。雨瑠に手を挙げていたというのは真実か」
わたしの名前が出てきて、どきっとする。
思わずビクッと揺れた肩を、京さんが優しく支えてくれた。
兄はというと見ていられないほど真っ青になり、唇をギュッと噛み締めて俯いた。



