そう麗日が言った瞬間。
コツ、と何者かの足音が響いた。
……だれ?
音のしたほうに視線を移して、驚きが隠せず目を見開く。
「久しぶりだな。李水、雨瑠」
───そこには、真っ黒なスーツを着て微笑を浮かべている父が立っていた。
近づくことですら躊躇う威厳とオーラ。
麗日よりもカリスマ性が高いと言えるかもしれない。
元裏の世界のトップだということを、簡単に信じてしまえるほどには。
唖然として動けないでいるわたしとは違い、兄は慌てて立ち上がった。
「お久しぶり、です、父さん……」
実の子どもだけれど、わたしたちが小さい頃から、仕事で忙しい父とはほとんど顔を合わせたことがなかった。
おかげで少し他人行儀なところがある。



