Hush night



「……スイ、ちげえよ」


ズルズルと崩れ落ちた兄を見下ろし、麗日は低い声で言った。



「お前だって苦しかったんだろ。ちゃんと歩み寄って話さなかった俺も悪い。でも、大事な妹の雨瑠を、傷付けていいのか」

「……っ、」


「自分が手を挙げたせいで泣いている妹を見て、もっと苦しくなったんじゃないのか」

「……っそんなの、」



兄はそこで口を閉ざした。

静かに涙を流し、自分の手を傍観していた。


シンと静まり返る倉庫で、兄は崩れ落ちた体勢のまま、ゆっくりと口を開く。



「…………妹に、……雨瑠に、初めて手を挙げたときのことは、一生忘れられない」



兄の言葉が、わたしを過去に呼び戻す。

……わたしだって、忘れられない記憶だった。



どうして殴られているのかもわからないまま、ただ止めてくれるよう泣きながら頼んだ。

兄は、何度わたしが叫んでも止めてはくれなかった。