Hush night



ふと体勢を崩して顔を上げた少女は、息を呑むほど美しかった。

数年前のあのときも誰よりも美しいと思ったけれど、成長してさらに綺麗になっていた。



『……ほっといて』



俺に向かって、言葉を発してくれていることに感動した。

ずっと、会いたくて仕方なかった人。


怖いくらいに彼女に執心している心を気付かれたくなくて、わざと飄々とした言い方をした。



『ほっとけねーよ』



本心だった。

ずっと、きみのことを救いたかったと言いたかった。


ここで放っておけるのなら、俺はいまこんなところにいないとも。



『雑念なんかとっとと捨てろ』



スイのことも、過去も、全部忘れたら良い。

苦しいことなど忘れて、俺のことを見てほしい。


あわよくば、俺を必要としてほしい。



そう思って、彼女を拾った。

雨瑠のためなら、なんでも出来るという言葉に、少しの偽りもなかった。


少しずつ雨瑠が笑顔になっていくのが、嬉しくて仕方がなかった。







雨瑠は疑っていたけれど。

────俺の世界は本当に雨瑠で回っていたのだから。