Hush night



またもや、この場にいる彼を見失いそうになる。

本当の彼は、どういう人物なのだろうか。



……なんてこと、得体の知れないわたしが言えることじゃないな、とか。

生ぬるいこの空間が、わたしの脳をも溶かしていく。


ここにいると、なにもかも捨ててしまいたい想いに陥ってしまうのも。

自分、をさらけ出したい、そんな欲求が。


わたしの心を、固く堅く閉ざす。




「到着致しました」



無機質な運転手さんの声が麗日に向けられた。



まだ続行中の通話を切ることはできないらしく、彼は少しの間だけ、迷った素ぶりを見せる。



「弾」



視線は呼ばれた弾さんへ。


なにかを頼もうとしている、そんな麗日の瞳に勘付いたように、弾さんは助手席から身を乗り出す。



「うるちゃんを麗日の部屋に連れていけばいいって?」

「そ」



何も言葉など交わしていないのに伝わるんだ。

そんな些細なことでも、初対面のわたしからすれば驚くべきことだったり。


ふたりを見つめていると、麗日がわたしと目線を合わせてきた。




「……うる、すぐ行くから先に弾と向かえるか?」



案外、心配性なのか。

それとも、弾さんと噛み合わないわたしのツーショットが不安なのか。



通話中のスマホを放り投げてわたしに問う姿は、また特別を感じてしまってなんだか怖かった。


……もう、わたしは彼の心に侵入してしまったのか。



早い、これは予定外なのに。

…………。





“ 予 定 外 ? ”