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「馬鹿だね、お前」
心底呆れ返ったように兄が呟いた。
そして、わたしを見つめる兄の瞳は、“ 裏切り者 ”を見る目に変わってしまう。
蔑視の視線は、兄からずっと向けられていた。
いままで、兄が変わってしまった日からずっと。
「…………っお前もかよ!」
ガァンッとパイプ椅子を勢いよく蹴り、鈍い音が倉庫内に響いた。
反射的にびくりと肩を揺らしてしまうのを自覚しながら、小さく深呼吸をする。
……落ち着いて、うる。
兄は、ちゃんとわかってくれるはず。
だって、昔はあれほど優しかったのだから。
何度も怖くないと自分に言い聞かせ、口を開く勇気を出す。
なんとか出した声は震えていて、とても情けなかった。
「もう、……自らの手で、……麗日を傷付けられない」



