……もう、兄から離れられる?
一方的な暴力から解放される?
それは、魅力的な提案だと思った。
【レイ】がどんな人間なのかわからない。
それでも、兄から解放されるためには、【レイ】に接触するのは悪くないと考えたのだ。
「……本当に、解放、してくれるの、?」
震える声でそう尋ねた。
もう心も体も限界だった。
兄から逃げるために残された道は、これしかなかったのだ。
「ああ、でも───失敗したらわかってんだろうなあ?」
背筋が凍り、感情を捨てた心が揺れた。
……わたしが助かるために、見ず知らずの【レイ】を苦しめることは正解なのか。
必要のないわたしより、闇夜のトップである彼のほうが、生きる価値があるのに。
もう、何も考えられなかった。
こくりと頷けば、兄は満足そうに笑う。



