一体なにを言われるのだろう……と他人事のように思っていれば、彼は立ち上がって口を開いた。
「レイを、堕とせ」
静まり返る真夜中の倉庫で、兄はそう言った。
【レイ】を、堕とす……?
どういうことか理解できずにいると、兄は再度口を開いた。
「要はレイの弱点になればいい、つまり惚れさせてレイの女になれ」
「ほれ、させる……」
冷酷無慈悲な【レイ】を惚れさせることなど、不可能に近い。
ましてや、日常的にたくさんの女性に囲まれているであろう彼が、わたしを選ぶなどあり得ない。
無理な話だと、兄だってわかっているはずだ。
それなのに妙な確信があるのか、兄は言葉を撤回することなく、わたしに顔を近づけた。
「レイの弱点にお前がなれば、もう俺から解放してやるよ」
「……かい、ほう」
「ああ、そうだ。そうなりゃレイをぶっ潰して俺が天下を取ることが出来る。お前なんか必要なくなるからなあ?」



