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楽しくもない1日のなかで、夜は一段と嫌いだった。
なぜなら兄が、いちばん機嫌が悪くなる時間帯だから。
「……は? アサヒが、レイ側に回った?」
「はい。昨夜からアサヒと音信不通になってしまいまして、その節が妥当かと……」
「ありえねえ……っ、いますぐ見つけ出して吊し上げろ!」
「……でも、スイ様。いまは彼と連絡が取れない状況で、」
「んなこと知るか! やれって言ったらやれよ!」
「し、承知しました……っ」
少し狭い倉庫で、怒鳴り散らす兄の声に耳を塞ぎたくなる。
こんな状況はよくあることで、これから彼がわたしに何をするかも、もちろんわかっていた。
兄の下っ端が泣きそうになりながら倉庫を出ていくのを見届け、わたしはというと小汚い隅でうずくまる。
案の定、兄はわたしのほうへゆっくりと歩み寄り、その表情には不自然な笑みを浮かべていた。



