兄はわたしの言葉に数秒沈黙し、そして笑い飛ばした。
「まさかお前……レイに惚れたか?」
「……」
わたしが何も言わなかったのを肯定と取ったのか、兄は顔を顰めてわたしの髪を引っ張る。
あまりの力の強さに目を瞑れば、それを阻止するようにもう一度引っ張られた。
「忘れたのか? お前の役目が何なのか」
「……っ、」
「馬鹿じゃねえの? 惚れさせるつもりが惚れてしまった? 心底みっともねえな、お前」
吐き捨てるようなその言葉に、闇夜の記憶がフラッシュバックする。
────『……を、堕とせ』
麗日に拾われた日の夜のことを。



