Hush night



「………………は?」




兄の低い声でビリビリと空気が裂けていく。

もう取り返しのつかない事態になっていることを自覚する。



兄はすぐさま座っていたパイプ椅子を蹴散らし、ツカツカとわたしに歩み寄ってきた。

その表情は、至極恐ろしかった。


恨みや蔑みを全面にわたしに向けたその表情を、何度見たことか。


いままでは、この兄に反抗するなどあり得なかった。

何をされるかわからない。


どれほど殴られるかわからない。



その恐怖が、わたしの自由を根こそぎ奪っていたのだ。



顎を掴まれ、その強引な痛みにぐっと唇を噛み締めて耐える。



「あのさあ……“お兄ちゃん”って、誰のことだよ」


「……っ、」



「俺は妹なんて思ってもいねえ。お前にそう呼ばれたくもねえんだよ!」