このままでは、そんな彼にもう顔を向けられない。
これから会うことがなくなったとしても、決めたのだ。
麗日を、命を懸けてでも守ろうと。
人ひとりいるか怪しいほどの静けさに、ただ不気味に思う。
なんとか勇気を振り絞って半開きだった倉庫の入り口まで辿り着くと、がくがくと足が震えてしまう。
怖くて怖くて仕方がない。
過呼吸になりそうなのを必死で胸を押さえて耐えていると、ずっと頭にこびり付いていた声が降ってきた。
「───よお、妹」
途端に心が冷え切っていく。
その声を聞くだけで拒否反応が起き、顔を上げるのも苦痛だった。
この人の目を見てしまったら、全てが終わる気がする。
もう、……麗日のそばにはいられないのだと思う。
「おい、こっち向けや」
乱暴な手に髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられる。
わたしとそっくりの瞳を向けた兄───スイの機嫌が悪いことは、即座に理解した。



