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────三丁目の繁華街に在る倉庫。
仄暗い街の中、異様な空気を纏ったそれに向かって歩きながらため息をこぼす。
……ああ、また戻ってきてしまった。
かすかに後悔する気持ちはあるけれど、だからといってもう戻る場所などない。
覚悟を決めてここに来たからには、使命を果たすべきだと自分で自分に言い聞かせる。
繁華街の一角にある倉庫は、寂れて汚い。
……こんなに小さくて寂れた場所に、わたしはずっと囚われていたのか。
昼間は賑やかな場所なのに、夜になるとてんで静かだ。
その様子が薄気味悪く、悪寒がした。
無意識に自分が震えていることに気付く。
足取りが重くなっていることも自覚した。
それほどトラウマが植え付けられている場所に戻るのは、本当に辛い。
だけど……。
麗日は命が危ない状況でも、わたしを信じてくれていた。



