「弾に先に行かせたのは、今日なんとなく嫌な予感がしたから。マジで、それだけ」
「……そういうときに、俺がいるんじゃねえのかよ」
「わざわざ自分のお目付役を、危険な目に合わせる主人がいるかよ」
「……」
黙った弾は、後悔するように唇を噛んでいる。
俺は『獅童組』のトップであり、本当はこうして病院で寝転がっている場合ではない。
それくらい、自分でもわかっている。
でも、現実はそう上手くいかないものだ。
「車を降りて歩き出した瞬間、背後から鈍器で殴られて動きが鈍ったんだよ」
あのときは参ったな、と思い返す。
音もなく現れたそいつは、本気で俺のことを恨んでいるんだと悟った。
この世界を生きる以上、妬み嫉み恨みなど当たり前のように存在し、火種を浴びることも少なくない。
だからこそ気をつけていたはずだけれど、あいつからの恨みは尋常ではなかった。
最近うるのおかげで心の平和が続き、周りへの注意力が衰えていたのも原因なのかもしれない。
トップだと言ってもひとりの弱い人間なんだな、と自分で痛感した。



