「……うん」
彼の言葉に頷いた。
だけど、目は合わせなかった。
わたしはもう、……覚悟していたから。
それを悟られないように、出来るだけ綺麗な笑みを浮かべた。
何か言いたげに口を開いた麗日だったけれど、痛みが襲ってきたのか、ぐっと顔を歪めた。
それを見た弾さんが、すぐに体制を変えて麗日を支えた。
「じゃあ、また連絡するから」
こくりと頷き、麗日の肩を抱いて急いでエレベーターに乗り込もうとする弾さんの背中を見つめる。
そうして弾さんは誰かに電話して、麗日が残した血の跡の処理をお願いしていた。
廊下に残る、麗日の鮮やかな血を眺める。
苦しくて、逃れられない闇に溺れそうになった。
わたしは、最低だ。
もう……全部、やめなければならない。
彼らを乗せた車が発車したのを、ベランダから確認する。



